2010年11月26日金曜日

第一回 特別講義 講師:立岩真也先生「学芸に対する公金支出の正当化の困難について」

第一回 特別講義
「学芸に対する公金支出の正当化の困難について」

講師:立岩真也(立命館大学大学院先端総合学術研究科教授)
日時:10月25日(月)19:30-21:00
会場:早稲田(本部)キャンパス 26号館(大隈記念タワー)302会議室
ゼミナール講師:
曽田修司(跡見学園女子大学マネジメント学部、ITI事務局長)
藤井慎太郎(早稲田大学文学学術院、演劇博物館GCOE芸術文化環境研究コース)
主催:早稲田大学演劇博物館グローバルCOE芸術文化環境研究コース

立岩先生配布資料

活動報告:自主合宿

「討議」そのものの時間を確保し、ひとりひとりが<所有>をめぐる問題系についての
理解を深めることを目的に、10月10日〜11日にかけ、早稲田奉仕園にて自主合宿を行いました。

合宿の企画運営は受講生有志によって進められ、充実した2日間となりました。
今回はそのプログラムの一部をご紹介します。



ワークショップ:
合宿最初のプログラムは、アーティスト・いちむらみさこさんによるワークショップ。
「自分の体を存在させるために、絶対的に占拠する」をテーマに、野宿を体験しました。
まずは街を歩きながら、野宿の際に使えそうな「タダのもの」を探します。
そして入手した段ボール等を片手に、戸山公園へ。
まず、広場で段ボールや新聞紙を座布団に、いちむらさんよりホームレス生活についてお話を伺いました。
そして、いよいよ野宿体験。安全そうな場所、住み心地の良さそうな場所を自らで見つけ出し、実際に寝てみようという試みです。
公衆トイレの前、ベンチの上、木の根元、歩道...思い思いの場所に段ボールを広げ、ひとときの野宿体験をしました。


勉強会:
合宿中3回に渡って行われた勉強会では、白熱した議論が繰り広げられました。

合宿1日目には、特別講義(10月25日)のゲスト講師、立岩真也先生の著書『私的所有論』・『人間の条件』・『所有と国家のゆくえ』を
参考文献として利用した、グループディスカッションを行いました。

合宿2日目、最後の勉強会では、「それぞれがアートをどのように捉えているか」というテーマに発展。
参加者それぞれのアート観を共有、その多様性を認識すると同時に、
議論することの難しさと面白さを改めて実感しました。



次回の活動報告では、10月25日に行われた、立岩真也先生による特別講義についてお伝えいたします。

オリエンテーション配布資料

6月14日 第1回(オリエンテーション)の際に配布された曽田先生による資料を合わせて投稿いたします。



2010/6/14曽田修司(2010/10/10補訂)
オリエンテーション

何を問題としたいのか

■所有、アート、社会
〈所有〉のあり方が社会をどのように規定しているかについては、J・ロック以来、多くの議論の蓄積がある
経済学、哲学、社会思想史、政治学、社会学、etc.

■アートと社会
近年、アートと社会の関係についても、多くのことが語られるようになった
ほとんどの場合、アートは財(人間が所有し、利用するもの)として語られている(文化経済学、アーツマネジメント、文化芸術の振興)

■〈所有〉とアート
〈所有〉とアートが結びつけて語られることもある。
だが、そのようなとき、アートはあまりに一面的かつ固定的なものとして(すでに出来上がったものとして/商品として/利用されるものとして/影響されるものとして)語られてはいないか

■アートの問い直し
アートというもののあり方への問い直しが必要なのではないか
「自己」も「権利」も実体ではなく関係性に立脚した概念であるなら、アートもまた、実体ではなく関係性としてとらえられるべきではないか
アートの幅はもっと広く、アートの概念はもっとずっと可変的である

■〈所有〉からアートと社会の関係を考える
個人に与えられたもの(所有)(=権利、能力、など)が世の中のすべてのことがらの基底をなす実体であるという世界観(社会観)をまずは再評価し、さらに、その価値を根本から問い直すことは、どのようにして、あるいは、どこまで可能か

◆アートと〈所有〉の問題系(1)
アート作品の私蔵処分(J・L・サックス「レンブラントでダーツ遊びとは」)
博物館、美術館、劇場等の作品の選定を誰がするのか(公共財または「公共選択」の問題)
税金の使い方(びわ湖ホール問題、橋下「大阪維新」)
公共財/価値財
著作権/コモンズ
排他的権利
オリジナリティ/作家性

◆アートと〈所有〉の問題系(2)
ボランティア/NPO
寄付税制
共同財
貨幣ではなく、個人の意思や価値観(の所有/共有)が前提とされている

◆アートと〈所有〉の問題系(3)
〈所有〉はあらゆるものに関わる
能力とは何か
権利/人格/アイデンティティ/自由/公正/正義/国家/権力/支配/秩序/法律/規範/合意形成/公共性
共同体/倫理/生き方/自由・平等・友愛(博愛)
資本主義/市場主義/市民主義
自己/他者/無意識
言語/身体

◆アートと〈所有〉の問題系(4)
生き方を考える
わたしたちとは誰か
社会が想定している価値とは何か、目指すべき価値とは何か

フローとストック/時間軸を入れる
エコシステムとしての文化論

活動報告:第1回~第3回ゼミナール概要

6月よりスタートした当ゼミナールは、下記の内容で進めてまいりました。
今回は第3回までの概要を掲載いたします。


6月14日 第1回(オリエンテーション):
ゼミ概要説明及び、講師・受講生による自己紹介(関心や問題意識を持っているトピックについての発表)。


6月28日 第2回(読書会):
参考文献(岩井克人『資本主義から市民主義へ』、大庭健、鷲田清一編『所有のエチカ』、立岩真也『私的所有論』)の
気になるキーワードを付箋に書き出した後、

⒈「所有」をどのように問題化できるか?
2.それをアートとどう関わらせることができるか?
という問いを設定し、ディスカッション。


7月5日 第3回(読書会振り返りとゲストについての議論):
前半は第1回の感想、及び第2回以降気になった書籍やニュース等について発表。
後半はゲスト講師としてお招きしたい方について、その方のご活動がどのように「所有」と関係するかという観点からのプレゼンテーション。


教場外では、メーリングリストを用いた書籍・イベント・ニュース等について情報交換及びディスカッションが活発に行われました。