2010年12月20日月曜日

国際法からみた「文化」って?

国が取り組む「文化芸術振興」政策について、「憲法25条」の話題が盛り上がった後、
今度は国際法的観点からの論点がMLで意見交換されました。 

◆JL氏のコメント(抜粋)
2009年12月に社会権規約委員会の一般的意見21というものが公表されました。
一般的意見はこれで21番目ですが、一般に言って、一般的意見の解釈の影響力は大きく、各国の政策に大きなインパクトを与えています。

この一般的意見21は、文化的権利のなかでも最も重要な「文化的生活に参加する権利」を扱っている点でかなり注目されるのですが、この意見の中では、あらゆる人間がもっているこの権利を保護するために政府がしなければならないことをまとめています。


みなさんの議論とからめて面白いのは、委員会の「文化」の認識がかなり広いところです。
あくまで例示ですが、それでも以下のように「文化」に様々なものが含まれ、「アート」はそのなかの一部に過ぎません。

 ways of life; language; oral and written literature; music and song; non-verval communication; religion or belif systems; rites and ceremonies;
sport and games; methods of production or technology; natural and man-made environments; food; clothing and shelter and the arts; customs and traditions

政府は、国際法上、文化的生活への介入を控える(自由権的側面)一方で、文化的生活への参加を促進する積極的な行動(社会権的側面)を求められるのですが、上のように様々な形をとる文化的生活を保障することは求められていても、「アート」が特に特権視されているわけではありません。


ですので、平田氏が「精神的な健康」を叫んでいる点はよいとしても、「文化」=「アート」のような形で主張されている点、非アート系市民に納得できるものか疑問です。


仮に劇場法で劇場に対する公的支援を増やしたいなら、他の「文化」に比べ、「演劇」に支援が必要な納得できる理由を特に非アート系市民に示さなければならないと思っています。


すべての文化的生活を保障できれば言うことはないし、最終的な目標にはすべきと思いますが、他に支援を必要とする文化的生活を差し置いて「演劇」を支援する理由は果たして何か。現在の劇場法の議論のなかで、それを非アート系市民に説明し尽くしているとは思いません。現在の日本では、「文化」=「アート」と考える(考えさせられている)人が多いため、自分が文化的生活に参加しているという意識が少ないように思う。だからこそ、アート系市民中心の文化政策になりがちなのだと感じています。

「文化政策のアート系市民による占有問題」。これが私の考えたい最大の所有問題だったりします。

◆ヒデ高橋のコメント(抜粋)
「憲法25条」の次は「国連」まで登場してきて
もはや作為的な盛り上げなど必要ない感じですが、
しつこく、「うざい!」というお声覚悟で、少し書かせて頂きます。

「アートが社会にとって重要」あるいは「アートは公共である」という平田オリザ的言説は、
本当は論拠薄弱なる「ウソ」「幽霊」の類であり、
アートを生業としたい人、アートでしか生きられない人たち、
あるいは単純にアートを楽しみたい人たちが、
税金をぶんどってくるための「ネタ」である・・・と
まずは、軽く割り切るべきなのではないかという気がします。

ただ、他人の金を動かすわけですから、その「ネタ」たる「ウソ」は
あくまで人を信じ込ませてしまう程度の壮大なる「ウソ」でなければならないという
逆説説的な側面を内包していて、
単純に「アートは25条に含まれる」とか「国連もアートは入っていると言っている」とか
そういう話では、説得力ゼロ
・・・・このあたりは、OLさんやJLさんの意見と合致している気がします。

ただ、目的が、やはり「税金をアートにぶんどってくる」ということであるなら、
ここはひとつ、皆さんと一緒に、新しい壮大なる「ウソ」を構築せなばならない
・・・と、まあ、戦略的なアプローチも、今後のディスカッションの中に
入れられればな・・・と思っております。

つまり、障がいの「ある」人や、ホームレスの人、単純にアートが好きでもない人達にも、
「ああ、アートね、そこに税金つぎ込むのは当然だよ」と思わせるような、
アート版『不都合な真実』が必要なのではないかと (ま、あくまで、戦略的にですが・・・)

で、それが、作れないのであれば、変な悪あがきはやめて、
アメリカみたいに金持ちのパトロン探しをメインの戦略にすべきという結論になるでしょう

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